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エンディングG

伝説の楽器の儀式を行う

マネージャーが――愛しいあの子が、私に伝えたかったことは、私にして欲しかったことは、私に残してくれた物は……?

 

ピアニスト「伝説の楽器を手に入れる方法……わかったかもしれない」

 

小さく漏れ出た言葉に、みんなが一斉に振り返った。

わずかな時間、沈黙がすべてを飲み込んでいた。

窓を激しく叩いているはずの雨音すら、耳に届かず湿った空気中に霧散していく。

 

ヴァイオリニスト「錯乱しているわけではないだろうな?」

 

最初に沈黙を破ったのは、ヴァイオリニストだった。

いつも尊大な態度の彼は、こんな時でも尊大であろうと必死になっているようだ。

 

コントラベーシスト「でかしたよ、ピアニストちゃん! それで、どうやったら手に入るんだ!?」

 

ヴァイオリニストを押しのけ、大股で歩み寄ってきたコントラベーシストが、私の肩を強くつかむ。

嬉しそうな言葉とは裏腹に、表情は引きつっていた。「自分が伝説の楽器を手に入れたい」という欲望がありありと見て取れる。私が苦悶の声を漏らすと、横からビオリストが私をかばうように割って入ってきた。

 

ビオリスト「ピアニストさんが見つけたなら、最初にピアニストさんが使うべきだ!」

 

しばらくにらみ合った後、コントラベーシストは舌打ちして引き下がった。

臨界点に達していた緊張が緩んだのを見て、チェリストが私の顔色をうかがうように上目づかいで口を開く。

 

チェリスト「あの……ピアニストさんは伝説の楽器で、何を望むんですか?」

 

言わなくてもわかっているだろうに、彼女はあえて聞いてきた。

私の答えは決まっている。多分、みんなが私の望みをわかっているはずだ。

 

ピアニスト「マネージャーを生き返らせる。それで、一緒に音楽祭に出る」

 

幼い頃にあの子と誓った夢――。

そのために、私はこの学園に来たのだから。

 

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楽器室から、付箋が貼られた楽器を集めてきた。

この付箋には見覚えがある。マネージャーが普段使っていたものだ。

ヴァイオリン、チェロ、ビオラ、コントラバス……そして、レッスン室に備えられているピアノ。

ゴーストプレイヤーの面々が使う楽器がそろっている。

 

ピアニスト「伝説の楽器に必要なものは【生贄】と【儀式】」

 

皆に演奏の準備を進めてもらいながら、私は伝説の楽器を手に入れる方法について、自分の考察を皆に説明する。

【生贄】とは、文字通り「人間」そのもの。今回の場合は、マネージャーのこと。

【儀式】とは、演奏。【血塗れの楽譜】に書かれた楽譜を、【マネージャーの付箋が貼られた楽器】で演奏すること。

疑心暗鬼を顔に貼り付けたまま、みんなは私の話を聞いている。

 

ヴァイオリニスト「待て、生贄だと?」

 

やはり、一番聡明なヴァイオリニストが、真っ先に反応して眉をひそめる。

伝染していくように、ひとり、またひとりと顔が青ざめていく。

 

チェリスト「それって、本当だったらマネージャーさんはこの中の誰かを生贄にしようとしていたということですか?」

ピアニスト「ちがうよ。最初からあの子は、自分自身を生贄にするつもりだったんだ」

コントラベーシスト「どうしてそんなことが断言できるんだよ?」

 

不思議そうにするコントラベーシストに、私は冷静を装って答えた。

 

ピアニスト「あの子の最後、ちょっと不自然だったんだ。まるで死ぬことを望んでいるような感じだった」

 

視線を独占したまま、私はピアノ席に座った。

楽器の準備が終わり、みんながいつもの定位置についている。

ここ数か月、何度も繰り返し見た光景……思ったよりも私は、このグループを大切に思えているようだった。

 

ビオリスト「――待ってよ。最後って、つまり……」

ピアニスト「マネージャーを殺したのは、私」

 

だからこそ、私が確かめなければならないんだ。

あの子が、どうして今日私達を集めたのか、自分を犠牲にしてまで何をやるつもりだったのか。

そのすべてを知るためなら、バカバカしいオカルトにだって賭けてやる。

 

ピアニスト「恨みをぶつけるのは、全部終わった後にして」

 

そう言って、私は鍵盤の上で指を踊らせた。

 

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懸命に楽譜をにらみつけ、鍵盤を叩いていく。血塗れの楽譜は、内容を確認することはできなかったが、用意周到にもコピーした紙が人数分刷られていた。これも、マネージャーが用意したものだ。

 

初めて演奏する曲にもかかわらず、みんなミスの一つもなく演奏を続けている。

シンプルな曲だ。でも、それだけじゃない、不思議な力が私の指を動かしている。

音に没入し、だんだん現実と空想の境目がわからなくなってくる。

旋律が宙に浮かび、目まぐるしく私の肢体を出入りする。

演奏に集中し、あらゆる感覚が音楽に溶け込んでいく。

 

そして――。

私達は、最後の一音まで奏で終えた。

再び、雨粒が窓を叩く音がレッスン室を満たす。

 

コントラベーシスト「……なんだよ、何も起こんねーじゃんか」

 

コントラベーシストがため息をついた直後、異変は起こった。

鍵盤が何の前触れもなく沈み込み、鮮烈な音が鳴り響いたのだった

それに続くように、ヴァイオリンが、チェロが、ビオラが、コントラバスが一斉に宙に浮かび上がり、ひとりでに演奏をはじめる。

 

チェリスト「な、なに!?」

 

おびえたようにチェリストが、飛びのいた。

私は部屋を見回した後、目の前のピアノに視線を戻す。私達は、この怪奇現象を知っている。

誰も居ないはずの部屋から、楽器の演奏が聞こえてくる、SOR学園の七不思議――。

それは『ゴーストプレイヤー』と呼ばれる怪談だった。

 

呆然とする私達をよそに、亡霊の演奏家たちは楽器を叩き、弾き、吹き鳴らす。

その旋律の中から、私は聞き覚えのある音を感じとった。

 

ビオリスト「この演奏……」

 

ビオリストのつぶやきを聞いて、確信を得た。

これはマネージャーの演奏だ。私とよく似た、でも私より感動的な旋律。

しばらくして、楽器たちはひとつ、またひとつと重力に引かれて地面へと落ち、沈黙していった。

最後まで音を鳴らしているのは、ピアノだけだった。

ごく短い旋律を、繰り返しループしている。

 

ピアニスト「これ、あの子が弾いてる」

 

荒唐無稽なことを口走ってしまったが、誰も反論しなかった。

目の前で異常現象が起きているのだから、否定する気にもなれなかったのだろう。

 

コントラベーシスト「何か伝えようとしてんのかな?」

ビオリスト「6音……かな? ずっと繰り返してる」

 

レ、ソ、ド、ミ、レ♯、シ。

単純な旋律が、延々と続いていく。

 

チェリスト「暗号とかですかね?」

ヴァイオリニスト「……それだ! マネージャーのPCのパスワード!」

 

ヴァイオリニストの言葉を聞いて、私はあの子のノートPCに駆け寄った。

パスワードならば、普通は半角英数で構成されるべきだ。

レのシャープはどういう意味だろう……。

単純に入力するなら【D4G3C4E4D#4B3】だけど、あまりしっくりこない。

 

ヴァイオリニスト「半音下げるのを、半角にすると捉えられないか?」

 

ヴァイオリニストの助言に「なるほど」と頷いた。

おそらく、パスワードは……。

 

【D4G3C4E4e4B3】

 

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「レッスン室 6」のカードが開かれていない場合は表にして

”マネージャーのノートPC”

に書いてあるQRコードからパスワードを打ち込んでみましょう


 

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